Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第14回 シミュレーションモデルの考え方

設計計算のシチュエーション

設計計算を行うときに、皆さんはデバイスの特性をどこから得ますか?
多くの場合はデータシートの『電気特性』の表から必要なデータを読み取ります。

図1 ダイオードの電気特性例 出典:サンケン電気

ダイオードを例にとってみると、良く見るのが図1にあるような、電気特性です。絶対最大定格は越えてはならない仕様、電気特性はある条件下における仕様であることに注意が必要です。図1では順方向電圧降下Vfは25℃の環境において、1Aの順方向電流を流したときの電圧降下であり、ばらつきもあります。ダイオードの損失電力を計算する場合を考えると、単純には、順方向電流と順方向電圧効果を乗じれば良いことがわかります。

実動作領域を考える

ここで、自分の設計条件ではダイオード順方向電流の仕様は1Aで良いのか問題が勃発します。デバイスを選定する時点の概算ではいいのですが、このデバイスはどの程度ディレーティングが必要なのか。または、設計条件においてどのくらいの余裕率で動作させることができるのか。といった詳細設計に移行し設計の確からしさ(品質)を確定させる時点では、実動作条件での特性を確認する必要があります。『電気特性』表に記載されているデータを『静特性』と定義すると、実動作条件から得られる特性を『動特性』と定義し、設計条件下における特性は動特性カーブから読み取ります。図2はIf-Vfの特性を示した、代表カーブの事例です。温度による変化も表現されていますが、個別ばらつきは表現がないため、電気特性記載のばらつき比率から計算します。

図2 If-Vf特性事例 出典:サンケン電気

シミュレーションモデルを考える

シミュレーションで何を得たいのか(また出てきました)。目的により設計に必要な情報レベルに差があるように、シミュレーションの目的により、そのデバイスモデルの必要精度にも差が出てきます。デバイスが含まれる回路のざっくりとした挙動(波形)を得たいのならば、簡易的な特性さえ設定されていれば良いでしょう。一方、そのデバイスが生きるか死ぬかの判定が必要な場合など、正確な挙動と計算が必要なら動特性が正確に再現できるモデルであるべきです。デバイスメーカーが公開しているシミュレーションモデルが正確かどうかは見かけでは判別できないため、モデルを事前に検証するか、モデリングベンダーにモデリングを依頼するかいずれかが必要になります。

設計するって何

『設計する』という言葉から、皆さんは何をすることかと思い浮かべますか?私が、商品設計部門で仕事をしていたころ、その部門に所属しているだけでいっぱしの『設計者』ぶっていたように思い出します。もちろん、設計部門もいろいろな役割分担があります。いろいろな役割を分担しながら、一つの設計目的を達成するチームワークな訳ですので『設計者』の一員なのは間違いないです。回路設計する、デバイスを選定する、検証実験するどれ一つとっても何かを設計することには欠かせない事ですね。どれも設計の一部とも言えます。全てを経験し、理解することが『設計する』ことができるというのか、一部であっても極められていればプロフェッショナルとして君臨できるのか。皆さんはどちらを目指しますか?いずれにしても、データ解析力が肝となるのが経験則ではあります。シミュレーションはその最たるモノではないかと思います。
次回は、電気設計とシミュレーションのSDGsな関係最終回、データを解析することについて考えてみます。
最後までお読みいただきありがとうございました。