Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第15回 データを解析するってなに【最終回】

分析と解析

ウィキペディアによると、『データ』は以下のように定義されています。

データとは1人または複数の人や物や事象に関する定性的または定量的な値の集まりである。
データは何らかの形で分析されて初めて意思決定を行うのに適した情報となる。

実験により得られた情報であれ、シミュレーションで得られた情報であれ、それらの情報を有益なモノにするには、『分析』が必要なのです。
ところで、『分析』と『解析』は何か違いがあるでしょうか。英語ではどちらも『analysis』ですので違いはありませんが、日本語では以下の様な文脈で使われることが多く、『分析』は『解析』を包含する概念であることがわかります。

解析:専門的かつ数値的に内容を吟味し調べること
分析:どのような情報であれ、内容を吟味し調べること

私たちは、得られた情報を『解析』により見分けるとともに、事実とその関係性を見抜く『分析』を行います。しかし、目的を持ってこの分析を行い、分析結果により意思決定ができなければ意味を持たないことにも理解が必要です。
正しい分析をするための重要なポイントが『仮説』です。
『仮説』がなければ、解析の視点を定めることができず。物事を判断する明快な分析ができなくなります。仮説無き分析はデータの海に溺れてしまいます。
仮説をたて、データを解析し、解析したデータが仮説に対しどのような意味を持つのかと分析を深め判断する。このサイクルがシミュレーションを成功させるものと考えています。

情報のディジタル化

さて、解析するにあたり、データが数値の場合統計的な手法を持って相関性や回帰を得るイメージがあります。可視化の手法としてグラフ化したり、強弱をグラディエーションなどでビジュアルな表現をしたりすることもあります。
このように、集計や可視化には、情報のディジタル化が有効です。
ディジタル化は一般に以下の様に定義されています。

「アナログをディジタルへ変えること」 「アナログの業務工程をディジタルへ変えること」。
業務工程における作業を自動化したり、オンラインで完結させたり、ペーパーレス化したり、といった取り組みの総称。

実験の経過や結果をノートの1ページに走り書きする・・・良くあります・・・このようなアナログな業務を、コンピュータ上の情報としてデータ管理することで、分析を容易にし、再利用や情報共有・展開を容易にします。

DXってなんだっけ

第1話で、『DX』とは何か、から本コラムはスタートしました。

DXを定義してみる
いろいろな変革を牽引しつつ、ITを駆使して新しい商品やサービスを創り出していく
ということがディジタルによるトランスフォーメンションである

シミュレーションというIT技術を駆使してディジタル情報化されたデータを解析する。
ここには何かを解決するといった目的をもって、仮説をたて、ディジタル化されたデータを分析する。そして白黒はっきり決断していくことで新しい商品やサービスを創り出していくディジタルトランスフォーメーションを実現していく・・ということになるのではないでしょうか。

データあれこれ

皆さんは『データ』とはどういうものか想像できていますか?
数値であったり、現象であったり様々なデータが考えられますね。
データの状態により見え方や解析の考え方や手法が変わってきます。
デバイスのパッケージ温度の変化といった課題があったとすると、デバイスの動作条件の変化と温度変化を可視化することを考えると、図1のような事例が思い浮かびます。

図1 抵抗の温度上昇

設計は最終的に白黒決断付けなければならないため、あいまいなデータは決断の根拠付けには不適切で、情報の集計や可視化などによる解析には数値化されていることが重要です。

電気設計とシミュレーション

これまで、設計をすると言う行為とシミュレーションの関係についてお話ししてきました。
シミュレーションは設計根拠をディジタルの世界で検証していくには有効なツールです。
一方で目的と目的に応じたデータ解析を行い、目的に対する分析がなされなければ、有効な結論に至ることができません。
言い換えると、仮説とシミュレーションをツールとして使いこなしたディジタルデータの解析、そして分析このサイクルがこの先、電気設計者がプレゼンスを示し、プロフェッショナルとして持続可能とし続けることになっていくと信じています。
これで、『電気設計とシミュレーションのSDGsな関係』コラムは終了です。
最後までお読みいただきありがとうございました。