Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第11回 電気的『熱』設計について

デバイスの発熱とは

デバイスが発熱するというのはどういうことでしょうか。
抵抗器を例にとってみます。
抵抗に電圧を印加すると、抵抗値と電圧で決定される電流が流れるというのがオームの法則であるというのはご存じの通りです。
言い方を変えると、電圧源に抵抗を接続すると、抵抗で制限された電流が流れるといえます。電圧源をショート(0Ωを接続)すると無限大の電流が流れ、一定の抵抗値を接続すると電流はその抵抗値で制限されます。この制限された分は抵抗による損失といい、制限された結果である電流値と抵抗値の乗算が電力損失(抵抗で消費されている)となります。

図1 電力損失と熱

損失は抵抗器でエネルギーを消費した結果、つまり熱エネルギーとなって現われます。
熱エネルギーにより抵抗器の温度が上昇しますが、熱そのものは、抵抗の材料や構造、大きさに影響を受けます。
あらゆるデバイスは、その材料や構造で決定される電流経路の抵抗分と流れる電流による損失により発熱すると言えます。

熱設計とディレーティング

商品を安全に使っていただくために、熱設計を行うことが重要なのは、前回もお話ししたとおりです。熱設計とはデバイスの温度が安全に動作する範囲に収める設計をすることといえます。
デバイスに流れる電流経路の抵抗値が一定の場合、熱設計のポイントは流れる電流を制限して電力損失を一定以下になるように余裕をとることで、ディレーティングと呼んでいます。
抵抗器を例にとると、回路の平均電流下げるか、回路を制御できない場合は抵抗器のサイズ(熱容量)を大きくして、デバイス自身が発熱する量を減らすことになります。
ディレーティング設計で十分な発熱量を低減できないときは、放熱板や強制空冷などの施策を講じていくことになります。

熱設計の主体は誰か問題

ディレーティング設計について考え方を書いてきましたが、そもそも『熱設計』はどの部門が主体なのかは業態やこれまでの仕事の進め方、もしかしたら人間関係で左右されているかもしれません。
デバイスのディレーティング設計は回路設計者の仕事ですが、そもそも回路負荷の増加要因は商品仕様(機能設計)部門でしょうし、放熱設計は構造設計部門が主体になる場合もあるでしょう。
熱設計で苦労すると、開発期間を圧迫していき皆のイライラ感が増幅していきます。
最後は仕様、回路(デバイス)設計、構造の折衷点を探っていくことになりますので、部門間のコミュニケーションが大事なのだと思います(商品開発現場ではいっぱいいっぱいで私はあまりうまくなかったのですが・・)。
ここでも、相互理解と協力関係をうまく進めるには事実(数値化)と理論付けが重要で、検証データの解析力が大事なところだと思います。
次回は、熱と波形検証ついて考えていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。