Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第7回 シミュレーションによる可視化

可視化したいことは何か

シミュレーションにより何ができるのか=なにが可視化できるのかの前に、目的は何かに立ち戻ってみます。そうですね、手段の前に目的を明らかにするということです。私たちは最終的に何を得たいのか。そこには何か解決したい課題や現象があり、その課題は何を得ることで解決できるのかを先に考える必要があります。

例えば、商品が外乱により誤動作が発生するという事象について考えてみます。外乱が回路に入り込むことにより望まない挙動が起きているということなので、外乱と望まない挙動の因果関係を明らかにするとともに、因果関係を遮断する施策を立てなければならないと言うことになります。

望まない挙動とは想定外の方向から(または強さ)の力により、ある動作が発動されてしまう状態とも言えます。この想定外の力がどこから発生し、伝搬し、ある動作が発動するスイッチを押してしまうのか・・・を見ることができれば、頭の中で想像しながらきったはったするよりも早く、正確な(理論的な)手を打つことができるであろうことは容易に考えられると思います。

つまり、このような事象において

《目的》
現象の解明と対策
《手段》
外乱=ノイズがある挙動を起こしうるスイッチまで伝搬する経路、強さの可視化

ということになります。シミュレーションにより可視化したいことが明らかになったところで、次は実現方法を考えてみましょう。
ノイズを可視化する・・と書いてみますと、そもそもノイズというモノを定義しないと具体的な物理現象の何を見ればいいのかがわかりませんね。
シミュレーション技術は物理現象を計算により数値化することですので、ノイズのみならずシミュレーションを考える上で、目の前の現象を物理現象に置き換えることが必要です。
『ノイズ』とは何か。その発生の起点(原因)と高周波まで影響を及ぼす原因を探っていけば物理現象として捉えることが可能になります。

シミュレーションと都市伝説その2

ノイズにまつわる都市伝説(いいつたえ)は数限りなくあります。経験上の出来事、対策を否定しているわけではありません。言い伝え通りにすれば、確かにノイズのレベルは下がることは多々ありますし、あながち間違っていないな・・とミョーに納得してしまいます。
しかしながら、理屈で説明が十分できないところが『都市伝説』たる由縁ではないかと思います。シミュレーションによる解決を図ると考えに至った、このタイミングで都市伝説を物理現象として見直して見ましょう。
ミョーな納得感から物理現象・理論に基づく確信になるはずです。この一歩を踏み出すことがシミュレーション自体の成功のみならず、設計の仕方、仕組み改革につながると考えています。

次回は、電気設計における目的(必要な事項)に立ち戻り、シミュレーションの役立ちについて考えていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。