Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第1回 いまさらきけない『DXってなに』

本コラムは全12回を予定しており、開発者の立場から電気設計のディジタル化の意義について、見解を述べた後、開発プロセスのディジタル変革手段としてシミュレーションがどのように役立つのかや、シミュレーションが電気設計の課題解決を実現するために必須であるモデルについて、その考え方を事例を交えて説明してまいります。

昨今は『ディジタル化』または『DXディジタルトランスフォーメーション』という言葉をよく耳にします。
では、DXとは何なのか?今一度、復習してみましょう。
経済産業省のDXレポートには以下の様に定義されています。

出典 経済産業省DXレポート

あれこれ書かれていますが、ちょっと難し過ぎて、すぐに理解できません。

DXってなんだろう

従来の商品化プロセスではシーズ主体で商品を企画し市場に供給していたが、お客様に喜んで優先的に買っていただくには、いかにニーズをつかみ、タイムリーに市場展開できるかです。しかしながら、あまりに市場変化が早く企業が対応し切れていないのが現実ではないでしょうか。

また、新たなニーズをつかんでも自社の組織や文化あるいは開発の仕方・体制のままでは新しい考えの商品はできないかもしれません。これらの課題解決(いろいろな変革)を牽引しつつ、ITを駆使して新しい商品やサービスを創り出していくということがディジタルによるトランスフォーメンションと言うことになると思います。これは、何かのITシステムを導入すれば達成できるということではありません。今までにはない商品をいままでにないスピードで世に出す、これはいつも企業経営側からの命題として出されていることですが、実現できないボトルネック(それは組織かもしれないし、企業文化かもしれない)を変えること、つまりトランスフォーメーションをIT(ディジタル)を利用して実現することに他なりません。

ディジタル化ってなんだろう

しかし、目的はIT化でも、トランスフォーメーションでもないことに気づかなくてはなりません。いずれも手段であり、目的なく手段だけを実行してもなにも起きません。

経済産業省のDXレポートには以下のような引用があります。DXのボトルネックの一番目は『ビジョンと戦略』が不足していることで、これは経営的観点でも開発現場でも同じだと思います。

出典 経済産業省DXレポート

目的はなにか・・は、企業によりさまざまですので、本コラムでは、白物商品を例にして、ディジタル化により経営面と開発現場、特に電気系の開発現場になにをもたらすのか(何を目的にするのか)と、その考え方、方策(手段)について考えていきたいと思います。

開発に必要な変革とディジタル化ということでは、やはり目的が不明確だと何をディジタル化すればいいのかにこぎ着けることはできませんし、ディジタル化された何かを誰が、どのようなツールで、どのように扱えばいいのかもはっきりしません。

開発におけるボトルネックを明らかにするためには、課題らしきことをピンポイントで捉えようとするのではなく、商品ニーズを捉えてからお客様への手元に届き、満足いただけるまで(あるいは商品の死に際まで)のプロセスを鳥瞰した上であるべき姿を形にすることが必要だと思います。

ディジタルの反意語はアナログですので、開発のボトルネックになっているアナログな世界を考えてみます(もしかしたら、現在利用中のレガシーなディジタルシステムがボトルネックかもしれないので固定観念は禁物です)。

図1 開発プロセス例

一般的に開発は図1のように時間の経過とともに進んでいきます。それぞれの項目は、個々の設計担当者が頭で考える、項目から項目へのリレー(引き継ぎ)は図面や現物、評価も現物で行われます。聞くからにアナログチックですよね。ディジタル化のポイントはいっぱいありそうです。

次回は、ディジタル化の経営面での意味について考えてみたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。