Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第8回 電気設計の目的とやらねばならないこと

電気を設計するとは

電気の設計って何をすることなのでしょうか。
『商品を仕様通り安全に動作させること』というのが商品を開発することと定義した場合、電気設計者も同じ立ち位置ですね。

やらねばならない、具体的な作業としては

① 電気設計仕様の作り込み:商品仕様を回路仕様に落とし込む
② 電気設計仕様を実現する電子(電気)回路を設計する
③ 設計した回路に適したデバイスを選定する
④ 回路仕様通りに動作する実装設計(基板設計)をする
⑤ 完成した実装基板を検証し必要に応じ改善する
⑥ 製造工程へ図面で引き次ぐ

といったことでしょうか。
上記の中で、『設計』行為は②③の回路設計と④の実装設計です。それぞれの直接の目的は(商品)仕様を実現する回路仕様を具現化することであり、回路仕様通りに動作する現物を具現化することでしょう。それぞれの設計行為は一文で表現できるような単純作業でないことは明らかです。回路設計だけを捉えても、回路ロジック設計⇒基幹部品の選定⇒詳細設計⇒周辺回路定数の選定⇒ディレーティング(熱)設計・評価といったようにいくつものステップを踏みながら、回路を仕様通り完成させていきます。
また、この間コストやデリバリー、工法などに目を配り、過去トラブルの回避策を盛り込むなど息をつく暇も無いと思います。

シミュレーションの出番はどこにあるのか

これらの設計行為は、基板設計CADといったツールはあるものの、設計者の思考と手作業により実行されてきました。しかも、手作業が故の効率化や抜け漏れ防止も求められます。
こんなに忙しいのに加え、いろいろ自助努力を要求され、さらにデザインレビューなどの関門を突破するための資料(根拠)作りと言った具合に心が休まる場面が見当たらないほどかと想像します。
理屈では設計行為の中で設計根拠を整えれば関門自体は難関ではないのですが、そうはいっても設計検証には現物が欠かせないため時間がかかり、課題があればキッタハッタとならざるを得ませんね。
待ってください、いろいろのキーワードが出てきました。
・現物が必要
・課題の発生
・キッタハッタ

シミュレーションの出番の匂いがします。

シミュレーションをやりたい人々

ずいぶん前になりますが(ずいぶんというのは私が若い頃なので、数十年前)CADが普通になりつつあるころ(これも前時代的ですが)spice系の波形シミュレーションが学術誌やサイエンス系の雑誌に良く掲載されだした頃、多分に漏れず『なにかよくわからんがかっこいい』と思ったものです。本コラムの最初にDXとはなんぞや、目的が大事とくどくど言っておきながら、私のシミュレーションとの出会いは目的どころか、何に使うのかもよくわからないまま『かっこいい』が始まりでした。
今でこそ、ドロドロした開発現場も多く経験し、それらの中で得た結論としてのシミュレーションの世界をお話していますが、始まりなんてこのような憧れのようなのかもしれません。
次回は、電気設計行為のシミュレーション化について考えていきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。