Vol.3 電気設計とシミュレーションのSDGsな関係

第4回 シミュレーションってなに

シミュレーションが実現することの一般解

ディジタルにより開発の何が変わるのか。何が良くなるのかと考えがちですが、第2話、第3話で受け身では変革はできないというお話をしました。
ビジョンをもち、変化を恐れない戦略的なディジタル推進が将来のバラ色の世界を広げると考えています。
さて、ディジタル戦略の一つとしてあげられるのがシミュレーションです。当然ながら漠然とシミュレーションだといっても何も起きません。ボトルネックの何を解決することを目的とするのか、明確なビジョンと戦略を持つことが大切です。とはいってもシミュレーションが何者なのかを知っておかなければ、手段としての候補にも挙がらないかもしれません。
シミュレーションとは何か、

図1 シミュレーションの定義

一般解の一つは、現物がなくても実行できる『仮想実験』と言えると思います。

手段としてのシミュレーションはなにをもたらすか

仮想世界で行われる実験なので、結果としてデータが残ります。
答えではなく、あくまで『データ』が得られることがポイントです。メディアなどでシミュレーションの解説を目にすることも多くなりました。シミュレーションを行うと答えがでるような錯覚になりますが、シミュレーションデータを『解析』し、目的(課題)に対する答えを導きだすことが必要です。

図2 可視化されたデータ例

このように言うと、実験と変わらないではないか、何がいいのかとなりますが、仮想:バーチャル上での実験であることが重要なのです。すぐに思い浮かぶのは現物が無くても良い点です。現物実験では当然ながら、製品本体や電装品など実験するための現物が必要ですから現物の準備(皆無の場合は試作)期間や実験に必要な現物数、実験設備の空き状況などにスケジュールが左右されます。
言い換えると、現物がなくても開発が進行可能ということは、実験に必要な現物を準備する期間が不用になるのですから、目的が開発期間の短縮であれば、シミュレーションにより達成することを見込むことができます。
また、バーチャルによるシミュレーションを従来の現物を使った実験に置き換えることは、様々な効果を予想することができます。例えば、回路定数のばらつきを評価する場合、現物実験ではデバイスの特性ばらつき品を準備またはむりやり組み合わせて作り込み、デバイスを入れ替えて実験を繰り返したり、商品本体を複数台準備して実験を繰り返すことがありますが、シミュレーションはデータ上で定数を設定すれば評価が可能になります。
シミュレーションは、ディジタルデータさえ準備すれば仮想実験が可能であり、シミュレーション結果もディジタルデータですので、現物では見えなかった(例えばプリント基板上の磁界伝導)ことが見えるようになることで、現象の解明あるいは物性の予測が可能となります。
このように得られたディジタルデータにより様々な効果を期待できる訳ですが、冒頭にも記載しましたように、得られたデータを目的に応じた解析を行い、課題に対する答えを導出しなければなりません。シミュレーションはバラ色の世界を垣間見せていますが、バラ色の世界を引き寄せるにはやはり、『ビジョン』、『目的』と『解析力』が三位一体となっていることが重要です。

図3 シミュレーション活用への道筋

様々な実験があるように、シミュレーションも様々です。実験にも目的があるのは当然で、目的に適合した答えを導出できるシミュレーションツールとリソースが欠かせません。

次回は、DXとシミュレーションの関係について考えてみます。
最後までお読みいただきありがとうございました。