EOLへ対応するとはどういうことか
部品はいずれ終息する。
部品を採用した時点から、その部品は終息(EOL)にひた走っています。
電気のハード設計部門は商品機能を実現する部品、回路、基板それぞれを選定あるいは設計します。
設計部門は商品設計する過程で、いわゆるQ(品質)C(コスト)D(デリバリー)で目標値を達成しなければなりません。
ここで皆さんは、『D』とはなにを想像していますか?
一般的には『納期』:発注から納品されるまでの時間とされています。この時間を適切化するには、以下の様な視点での制御が必要です。
- 部品メーカーの生産量から必要量の確保
- 部品メーカーの工場から、基板実装工場への輸送(輸入)経路確保
- 部品メーカーが安定した品質での生産能力(対応力)を保持
図1 QCDをバランスさせる
私たち部品ユーザーは部品在庫を最小限にすることで、不要な支出を抑えることに腐心しています。その代わりに商品の生産が近づいたら即時納品が必要ですのでこの『D』がとても重要です。
部品の選定にあたっては、『QCD』を考慮するのは当然必要なことですが、抜けがちになるのはQCDの陰に隠れた、将来リスクではないかと思います。
- いつまで生産可能なのか
- 地政学的、自然災害などのリスクの回避策の折り込み
- 代替可能な部品の存在の確認、先行調査
EOLは突然やって来るかもしれません。EOLへの対応とは、計画的なEOLだけでなく、突然発生しうるEOLへの即応と将来リスクへの備えの二面性があります。
EOLの即応と将来リスク対応
突然発生したEOL(前触れもなくEOL情報が入電したとか、自然災害などで部品メーカーが生産不能になったとか)には、否応なく代替部品を選定し、検証・出図を可及的速やかに完遂しなければなりません。
信憑性の高い代替候補部品の提示があればまだいいですが、代替部品の提示がなければ候補部品を探すところから始まります。
候補部品が見つかれば(必要な電気的、外形的仕様が近似している)、設計計算や各種評価を行い新しい部品の承認と量産図面類の作成、生産調整へと進めます。
将来リスク対応は、使っている部品がEOLとなってしまう前に、代替候補部品を探索し、代替検証作業を事前に行うことに加え、部品選定にあたっては将来リスクを考慮した戦略的な調達計画が重要です。
主役になるときが来た
部品EOLの対応は、自分が初期設計担当した商品だけではないことも往々にしてあります。この状況は、『自分が設計していない(のでよくわからない)』という事だけではなく、『自分が設計担当ではない』といったモチベーションが上がりにくい課題にもつながってしまうこともあるかもしれません。
EOL(の対応)が、花形の商品開発の陰になりがちなのも要因かもしれません。
メインである商品開発の流れの中でさえ、邪険にしがちなEOL対応(これは経験談です。すいません)です。生産を継続する(BCP)経営課題であるにもかかわらず誰もが見て見ぬふりをしてきたのかもしれません。電子部品が慢性的に不足するだけでなく、世界中の情勢や自然災害の影響が顕著になりがちな昨今、主役になるチャンス到来かもしれません。
ある成功者の言葉です。
『誰でもできそうなことを、一歩先に実現する。実現することが大事なんだ』
次回は、代替部品をどのように捉えるかについて考察していこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。