Vol.5 BCPな電気設計を考える

第5回 EOLの責任       

EOLの始まり

なぜ部品は終息するのか。部品メーカーの理由は様々です。
では、EOLの始まりはいつでしょうか。
回路を構成する部品を選定した時からEOLは始まっていると言えるのではないでしょうか。
部品メーカーが、その部品を量産に移行する前のサンプル部品ならば比較的息は長いかもしれません。
一方、品質も安定しコストも下がりきった量産実績の長い部品は既にEOL直前かもしれません。品質が良くコストも限界に近く下がった部品を選定することはある意味当然です。
設計も調達も材料コストを下げることは命題ですし、品質課題を出さないためにもあたりまえの選択だと思います。

図1 EOLはいつ始まるのか

EOLに対する責任の所在

EOLはユーザーからはコントロールできないため(在庫するためにEOL前にある程度作りだめを依頼することはできる)、文句をいいつつ受け入れざるを得なくなります。
部品メーカーは事前予告をしているでしょうから、受け入れ準備はユーザーが自己責任で行うことになります。
つまり生産を止めないように行動する責任はユーザーにあることになります。
では、ユーザー側のどの部門が責任をもつのか。前線にたっているのは、多くの場合調達に関わる部門だと思いますので、部品がEOLとなった初動から終息までは調達部門に責任がかかるのは必然かもしれません。
しかしながら、代替候補部品の機能・性能・品質面の検証、量産図面への反映をするのは設計部門です。
はっきりしていることは、部品のEOL情報管理は調達系、代替部品に代えたときの検証・判断・関連図面の変更出図は設計が責任を負っている(担っている)と思います。

重要な初動

このように見ると、責任が曖昧な部分の存在が見えてきます。
代替候補部品はどこが情報源になるのか。
技術的な判断は間違いなく設計だと思いますが、前述したように、選定した瞬間にEOLが始まることから、部品選定元をどこに求めるかは戦略的に考える必要があります。
長期的な部品調達(部品メーカーの製造)見通し、コスト、地政学的なリスクといった組織判断が戦略的な判断になるところではないでしょうか。
部品の選定に係る初動は、企業(ユーザー)組織によりその考え方は様々です。
基本的に調達部門が主導している企業もあれば、設計部門が握っている場合もあるでしょう。
企業(組織)が大きくなればなるほど、決定権の集中と事業部門毎の権限委譲が複雑になり曖昧になる傾向にあるようにも感じます。

図2 EOL対応は初動が重要

近年、部品は売り手市場になってきており、コーポレート単位でないと対等に協議ができないという現状を良く鑑みなければなりません。
責任部門をどうするかではなく、情報管理、採用、検証それぞれの役割を明確化し共通の目的の下、戦略的に先手を打っていくことが必要なことではないでしょうか。

どうする

そうは言うものの、調達/設計双方の被害者意識から抜け出すのは、なかなか難しい点かもしれません。
何のためにEOLに対応するのか。意識改革も必要ですが、精神論だけでリソースが不足していては『わかってはいるけど、でもね・・』となりがちです。
設計側からEOLを考えた場合いろいろな手の打ち方が考えられると思います。
今でこそ、視点を変えて経営貢献するには・・・みたいに論じていますが、振り返ってみると面倒なのが嫌いなので、設計の忙しさを理由になるべく抱え込まないようにしていた自分がいました。コラムではその反省も含め、設計部門からみた行動指針や、実際にリソースを有効に活用するための方法論について考察していこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。