視点をどこに置くのか
設計の成果物は(製品)設計図面です。設計図面をもとに
- 材料・部品の手配
- 製造条件の定義
- 製造
これらが実行されます。
つまり、SCM上には設計図面を基にデータ化された情報が存在することになります。
設計図面は何かをきっかけに変更されることがあるため、SCMは常に設計に目を向けなければなりません。不用意な設計変更がSCM上の部門からいい顔されない心情がよくわかりますね。変更出図にあたってはSCM上の綿密な調整が必要です。
一方、設計に必要な情報はどこから取得すればいいでしょうか。
- 設計要件
- 原材料・部品情報、仕様
- 検証(結果)
設計部門で管理されているのか、社外(メーカ)から取得するのか、設計外部門の協力をもらうのか。手段や方法は様々(組織体や制度、もしかしたら人間関係がものをいう)です。
設計に必要なデータは設計要件により変化するため、標準化は難しい側面は確かにあります。
相互理解と共感が次に繋がる
『設計のことは設計にしかわからない』
このような概念はこれまでも設計者のプライドであり、他の部門からの暗黙の認識であったかもしれません。
直接の設計者でないと理解できないことは設計者間でも存在します。
ディジタルデータの世界への入り口は、標準化されたデータフォーマットへの置き換えです。専門用語の羅列だけではクローズしたままです。SCM上で理解できる言葉に置き換えることで設計に必要なデータがSCMからECM上流に流れるようにすることが可能です。
一方、SCMでは、設計を特別な領域にして目を背けるのではなく、理解が必要です。ここでいう理解は設計をできるようにするということではなく、設計要件(なにが必要なのか)を認識するということです。
設計、製造、調達それぞれの都合、言い分・課題があり、ともすれば双方が非難しがちですが、相互理解のもとより良い状態にするための協業体制と共通言語にすることでECMとSCMが接続され、ディジタルデータによる業務革新(いわゆるDX)が可能になると思います。
例えば、ECM上に設計要件を基にした部品仕様や要求事項がセットされるとSCM上流の源泉(調達)に調達要件を加えた選定要件が定義され調査を開始、同時に設計要件を基に技術データが収集され評価検討を経てECMに候補部品として帰ってくるスキームが構築されたら嬉しくないでしょうか。
図1 SCMとECMをデータ接続
生活習慣病にならないように
EOLは常につきまとう話題です。
天災などで部品の供給に課題が発生したときは全ての部門が共通認識を持っているので、一致団結して事に当たることが多いように思いますが、恒常的に存在するEOLは自覚症状の少ない病気に似ています。痛みを感じにくいので生活習慣病的に何も行動していないわけでは無いのに確実に進行してしまいます。
時々健康診断で指摘されるかのように、メーカーから突き上げられかくしてメーカーと対峙している調達からなにもしてくれないとクレームがつくことになります。
設計は商品開発の傍ら粛々とVEと同時に代替部品化を進めているはずですが、みえにくいため源泉との対立の構図になってしまうかもしれません。
皆さんはいかがですか。
主体はどこにあるのか
私は防災士として活動を行っています。天災頻発の中、行政も実行力のある防災計画を造らねばとしていますが、私の居住地域では私たち防災士会に丸投げになりがちです。
何しろ権限のないボランティアなのに地域の自治会など公の組織を説得し動かさねばならぬという状態です。市民の命を守る行動の主体はどこにあるのか疑問符をもちながら、使命感だけでなんとかしようと奮闘する日々です。
BCPはいったいどの部門が制御するのか。
それぞれの正義を抱えた部門がそれぞれの言い分だけではBCPは制御できません。反省を含めて思い起こすと、相互に理解しようとせず組織の壁のせいにして心情に流されがちだったと思います。データ化と双方向性のシステム構築が鍵を握っているように思います。
部門を超えた協働はいつになっても難しい壁ですが、この壁を乗り越える意思と行動力、相手を理解する力がみなさんのプレゼンスを上げていくことになると思います。
次回は、最終回です。プレゼンスを上げる思考と方法論を考察してみます
最後までお読みいただきありがとうございました。