Vol.5 BCPな電気設計を考える

第4回 EOLであわてる        

部品が入手できなくなると通知されたら

生産活動のなかではいろいろな部署が役割分担しています。
主に部品を各メーカーや代理店から調達するのはいわゆる『調達部門』がその役割を担っています。理由はともあれ、その調達部門から『部品の入手ができなくなり生産が止まる』と通知されたら、まずはどうするでしょうか。
とりあえず文句を付けますか?文句を付けてもしかたないですが、言葉として発するかどうかは別にして文句の一つも付けたくなる気持ちはよくわかります。

あわてる

しかしながら、生産が止まるという直面する経営的課題を自分がボトルネックになるわけにはいきませんので、対処療法的に行動を移さなくてはなりません。
この間、設計側は商品開発の真っ最中(年間を通じて開発スケジュールにのっとり活動中)ですので、既に手を離れている量産商品に起きた課題は開発活動を圧迫することになります。
開発を止める分けにもいけないため、EOL対応をあわててスケジュールに組み込み、なけなしの工数を分散させざるを得なくなります。

さてどうするか

最初に思いつくのは、

  1. 買いだめ(在庫する)
    当面に必要な数量を確保することを調達にお願いするですが、これはすでに調達部門が行動を起こしているので、設計に通知する時点で買いだめが功を奏する時期はとうに過ぎているかもしれません。また、買いだめ=在庫はどちらかというと負債なので経営圧迫の原因になります。
  2. 図1 部品EOL発生時の初動

    次に思いつくのは

  3. 代わりの部品をEOLメーカーに紹介を依頼する
    ものが供給できない責任はメーカーだと短絡的に考えてしまうので『責任を問う』形に持っていきたいのですが、これもだれでも思いつくでしょうから、調達が先に手を打っているでしょう。この場合も、代わりの部品があるのなら、最初から『これ』と言ってくるでしょうから、紹介がないと言うことは(あっても同じspecとは限らない)期待は薄いですね。
  4. ならば、

  5. 自分で代替部品を探す
    新部品は採用活動が必要なため、既に承認が済んでいる部品類から代替可能な部品を特定していきます。ない場合は新部品の採用(部品自体の信頼性、採用メーカーの監査など)を行います。

このような対処療法的な対応が普通でした。ところが昨今、自動車のEV化やコロナ渦のPC特需、デバイスメーカーの統廃合などの影響を受けとにかく電子部品の入手困難がクローズアップされてきました。部品メーカーの売り手市場となり、とてもユーザー主導の対処療法的活動では部品入手が困難な時代です。
個別対応ではなく、部門を超えた組織化、先見性を持った採用計画、そして情報化がキーワードとなると思います。

これまでの対応は良かったのか

どうでしょうか、このような差し迫った経験はみなさん、沢山お持ちではないでしょうか
このような発生都度の対処は良くあることとは言え、『どうしてもっと早く状況が連係されてこなかったのか』と思ったことはしばしばありませんか。
時には自然災害で、部品メーカーの工場が機能停止に陥り部品入手見込みが当面ないということもあったでしょう。
とにかく、生産を止めないためにできることは最優先で実行し、元々の開発はあとでなんとかするということは、いい状態とはいいがたいですが、対処療法的に手を打った経験は私も何度もありました。(心の中で恨み節をつぶやきながら)目の前の出来事で仕方が無いとは言え、企業活動として軽く見ていたとしか言い様がないかもしれません。

次回は、EOL対応の責任について考察してみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。