Vol.1 回路シミュレーションの完全マップ

第5回 【電源回路技術】リニア・レギュレータとスイッチング・レギュレータ

 

今回は『電源回路技術』をテーマに取り上げます。

 

弊社が取り揃えているSPICEモデル(OrCAD / LTspice向け)のラインナップでも、この電源ICモデルの製品群は数多く取り揃えられています。

弊社ECサイトで販売しているレギュレータモデルはこちら

ここでは、特に直流(DC)を扱う電源回路について解説いたします。
まずDCを扱う安定化電源の回路方式には、大きく2種類が存在します。

 

 ①リニア・レギュレータ
・・・出力を連続的に安定化させるレギュレータ

 ②スイッチング・レギュレータ
・・・スイッチング技術を用いて、不連続的に出力を安定化させるレギュレータ

 

それでは、それぞれの回路方式について、もう少し見ていきましょう。

 

 

【電源回路技術】リニア・レギュレータ

 

まず、リニア・レギュレータについて解説いたします。
リニア・レギュレータは、スイッチングをすることなく、入力電圧を特定の出力電圧に下げることを目的に使用されます。

 

これには、以下2種類のタイプがあります。

 ①シリーズ・レギュレータ
 ②シャント・レギュレータ

 

まず、シリーズ・レギュレータは、入出力端子間に直列(シリーズ)の可変抵抗があるイメージになります。下図のR1に相当します。実際には、電源パスにあるトランジスタのオン抵抗をフィードバック回路より調整することで、このシリーズ抵抗は実現されています。

 

次に、シャント・レギュレータですが、こちらは可変抵抗を用いた分圧抵抗を想像して頂くとイメージしやすいかもしれません。シャント・レギュレータの場合は、R2が可変抵抗として制御されます。

 

図 リニア・レギュレータの等価回路

 

いずれの場合も、スイッチングをしていないため、リニア・レギュレータの接続先が電源ノイズに対してセンシティブな場合に好んで使われます。

ただし、基本的な考え方はシリーズ抵抗により入出力電源を調整するため、大きな電位差はそのまますべて熱に変わってしまいます。このためほとんどの場合は、リニア・レギュレータは数100mV程度の小さな入出力電圧差の電源のケースで用いられます。

 

 

【電源回路技術】スイッチング・レギュレータ

 

次に、スイッチング・レギュレータについてみていきましょう。

 

スイッチング・レギュレータは、入力電圧を定期的にスイッチングさせることで、その電圧値を平均化させる手法を用います。
入力電圧よりも低い電圧を作ることや、もしくは高い電圧を作り出すことも可能です。詳しいトポロジーに関しては、また別の記事をご用意します。

 

図 スイッチング技術の考え方

 

さらに、スイッチング・レギュレータには2種類のタイプがあります。

 ①絶縁型
 ②非絶縁型

 

『絶縁型』とは、トランスを用いて、入力側と出力部を分離(絶縁)したタイプになります。

例えば、コンセントから供給される商用の交流電源ラインは、非常に多くノイズを含んだ電源なので、出力部の回路とは物理的に断絶をして、安全性を確保した構成になっています。

こういった電源は、入力整流回路も含めてAC-DCコンバータと呼ばれます。

 

次に、『非絶縁型』のスイッチング・レギュレータは、その名の通り、入力部と出力部が絶縁されていないタイプのレギュレータになります。DC-DCコンバータと呼ばれます。
DC-DCコンバータは、直流(DC)電源電圧を、別の電圧レベルへ変換する役割を担っています。

 

例えば、身近なもので考えると、スマートフォンやデジカメのようなバッテリーで駆動する製品の電源は、リチウムイオンバッテリーから直接DC-DCコンバータで、各回路の電源レベルに変換されて供給されます。

コンセント経由で電源供給を受ける家電製品などは、一度非絶縁型電源にて、ACからDCに変換されてから、そのDC電源をシステム回路内の各回路に対して、要求される電源電圧レベルに、その回路の直近で変換される場合に、このDC-DCコンバータは使われます。こういった使われ方をする場合は、POL (Point of Load)コンバータとも呼ばれます。

 

図 POL(Point of Load)の電源接続イメージ

 

 

リニア・レギュレータとスイッチング・レギュレータの使い分け

 

次に、リニア・レギュレータとスイッチング・レギュレータの使い分けについて考えていきたいと思います。

システムの中での使い分けで一番分かりやすい基準は、上記でも述べましたが、その電源供給を受ける先の回路が、ノイズに対してセンシティブかどうか?という点です。

例えば、デジタル回路に対して供給するための電源であれば、あまりノイズを気にする必要はないので、スイッチング・レギュレータを用いることが一般的でしょう。

一方で、きれいな電源を供給したいアナログ回路などに対しては、リニア・レギュレータから供給することが好まれるケースが多いかと思います。

ただし、上記でも述べたとおり、大きな電圧ドロップはリニア・レギュレータには好まれないため、きれいな電源が必要で、かつ大きな電圧レベル変換が必要な場合は、DC-DCコンバータを介してから、LDO(Low Drop Out)のようなリニア・レギュレータを配置する手法が取られます。

 

 

まとめ

 

今回は『電源回路技術』の概要として、主にリニア・レギュレータとスイッチング・レギュレータの違いについて解説いたしました。