事例

モーデックが過去に実施したコンサルティング、モデリング、
設計支援の実績の一部を抜粋しています。

論文の特徴量抽出と、 グラフの数値変換

国立大学法人 東北大学
東北大学金属材料研究所では、研究テーマの一つとして、鉄の窒化処理に関する研究に取り組んでいる。過去数十年間に渡り、数多の研究者が論文発表してきた研究成果を、一つのデータに纏め、AIで解析する国家プロジェクトにおいて、学術論文から、グラフ数値データと特徴量を抽出する膨大な作業が発生していた。本事例では、この作業をモーデックに委託いただいた背景や内容について、宮本准教授にインタビュー形式でお伺いした。

取り組んでいる内容について、教えてください。

過去の技術論文をAI解析する取り組み

文部科学省主導の、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトの一環として、鉄の窒化処理と得られる強度についての研究を進めています。具体的には、機械学習を利用することで、これまで数十年間に渡り様々な学者によって発表されてきた研究成果を、一つのプログラムに集約したモデルを作成します。これにより従来は人間の経験と知識に頼っていた部分を、モデルから予測し、用途に応じて最適な鋼の特性と最適な処理条件を即時に得ることができます。

どのような課題が発生していましたか?

AI解析したいが、手元にあるのは大量のPDFだけ…

機械学習によりモデルを作成するためには、正確な数値データが必要です。時間と人数が限られる中、470ページにも及ぶ論文集から機械学習用のデータ抽出を自前で行うのは、困難でした。具体的には、CSV形式のデータフォーマットに整理し、様々な実験条件ごとのデータを纏める必要がありました。また論文にはグラフで記された情報も多く、効率的に数値を読み取ることも求められました。限られたリソースを考慮すると、外部に作業を委託する必要がありました。

モーデックに依頼した背景を教えてください。

最初はダメ元で相談、打合せしてみて任せたいと思った。

論文内にはグラフの情報が非常に多かったので、初めはグラフから数値を取得する技術を持った会社を探しました。しかし、そのようなサービスを請け負っている会社は見つけることができませんでした。モーデックではグラフから数値取得するソフトウェアを開発していたので、ダメもとで問い合わせしてみたところ、快く引き受けてくれました。モーデックは電気電子の会社で、材料は専門外でしたが、打ち合わせしてみてエンジニアリング力があると感じ、論文の読み込みや数値データ抽出も実現できると考え、依頼することに決めました。

具体的な依頼内容や、対象の論文について教えてください

計473ページの論文から、560,000個のデータ抽出

大量の論文を読み込んで数値データを抽出し、一つのExcelファイルに纏める作業を依頼しました。論文によって前提条件や実験条件が異なる点に留意してもらいました。また論文中に出てくるグラフは、元データが存在せず、画像としての情報しかありませんでした。そこでモーデック社が自社開発している、グラフ数値化ソフトRODEMを利用した数値に変換する作業も依頼しました。

専門性の高い、鉄の加工と硬度の研究論文が対象

様々な条件で鉄の表面に窒化処理した際の、鉄表面の硬度と深さ分布についての論文が対象です。
右図は論文から条件抽出した具体的な数値データの例です。ここで紹介しているものは一部ですが、実際には55もの項目がありました。

実際に依頼してみて、どうでしたか?

リーズナブルな費用と短納期での対応、また依頼したい

予想よりも費用が安く、また短時間で納品してもらえたので、依頼して良かったです。
自前で作業する余裕が無かった中で、かなりの解析量に対し、スピード感のある対応をして貰い、とても助かりました。
新しい取り組みだったので、色々な企業に問い合わせしましたが、「やります」と言ってくれる企業がなかなか見つからなかった中で、今回の依頼により、プロジェクトがスムーズに進みました。
今後も大量のデータの変換が必要な際には、依頼を検討したいです。

東北大学金属材料研究所(KINKEN)のお取り組み

世界基準の構造材料を研究

1916年に発足した金属材料研究所は、鉄鋼の研究をミッションとしてスタートし、世界の構造材料研究を牽引する研究組織として、次の100年を見据えた革新的な材料科学研究に取り組んでいます。
現在取り組む研究課題の一つに、「耐疲労表面硬化材料プロジェクト」があります。具体例を上げると、次世代自動車に用いられるモーターには高トルクに耐えうるギアの小型化と軽量化、ノイズ低減の課題がありますが、これらを解決するために、ギアの表面硬化処理を従来の炭素から窒素に置き換えるための研究を進めています。歪みのないギアを低コストで作るべく、添加元素と加工プロセスの最適条件を示す高精度な予測モデルを確立することが一つの目標です。