Vol.6 モデルベース開発のメリットと電子回路設計のフロントローディング化

第3回 電子回路設計におけるシミュレーション環境構築の課題と対策案

第2話に続き、電子回路設計でシミュレーションを活用する際に必要なモデルの入手の現状と課題を理解するために、JEITAのデバイスモデルDX推進SC が公開している資料をレビューいたします。

モデルの入手と品質の課題

図3.1に示されているように、「仮想設計の成否を決める肝心のモデルの入手が困難」と現状の課題を提言しています。その対策案として、
・モデルをいつでも入手できる環境が整備される
・モデルの素性が開示され品質が担保される
の2つが掲げられています。

図3.1 モデル入手の現状と課題の電子デバイスモデルの円滑な流通を実現するためのJEITA活動のご紹介より引用(スライド12)

JEITAデバイスモデルDX推進SCでは、対策案を遂行するために様々な活動を行っていますが、一般社団法人という性格上、どうしてもかなりの時間を要してしまいます。不確実で複雑、不透明で曖昧な社会情勢であるVUCA(Volatility Uncertainty Complexity Ambiguity)時代に、JEITAデバイスモデルDX推進SCに大いに期待はしますが、結果が出るまでじっと待っていることはできません。

課題解決のためのサービス

そこで、それら対策案の一端を担えるモデルベンダーのモデル流通サービスModel On!(図3.2)を紹介しましょう。

図3.2 モデルベンダーが提供するモデル流通サービス例

本サービスは、国内のモデル流通に賛同する半導体・電子部品メーカーと共に企業連携エコシステムで構築されています。半導体や電子部品メーカーから以下の理由
・使いたいシミュレータのモデルが無い
・ノイズ解析を行う上でモデルの精度が十分でない
・メーカーのモデルではシミュレーションが収束しない
などで所望のモデル(海外の半導体・電子部品含む)が入手できない場合でも、モデル開発委託サービスと組み合わせて、電子機器の設計者が要求する精度・粒度のモデルをシミュレータごとに作成することが可能です。

このサービスを上手く使うことによって、半導体や電子部品メーカーだけでは実現しきれていないモデル流通を加速させることができるのではないでしょうか。迫りくるデジタル認証時代に向けて、半導体・電子部品メーカーと連携するこのモデル流通エコシステムに賛同する企業や団体が増えることを願わずにはいられません。

「Model On!」サービスの詳細

第3話はここまで。