2018.07.20

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初回は「シミュレーションとは何か?」、特に電子回路シミュレーションの重要性について解説いたします。

成熟した電子回路設計においては、デザインルールや既存回路の有効活用等による設計手法を上手く活用すれば、シミュレーションは不要という場合もあります。しかしながら、現実の世界では、シミュレーションを効率的に設計、解析、検証等に取り入れる企業が増えてきています。その理由や背景、どのようにすればシミュレーションを有効活用できるのかについて、これから10回の連載で解説していきます。

シミュレーションとは、物理的あるいは抽象的なシステムをモデルで表現し、そのモデルを使って模擬実験することです。実際に模型を作って模擬実験するシミュレーションとコンピュータ上で模擬計算するシミュレーションに大別されます。現在では、コンピュータの画期的な進化(価格、速度、ディスクやメモリ容量など)により、コンピュータ上での模擬計算、所謂、シミュレーションすることが当たり前のようになってきました。

関連するワードとしては、フロントローディング、MBD(Model Based Development)、1Dシミュレーション、Digital Twin(デジタルツイン)などがあります。

コンピュータによるシミュレーションが多く使われるようになってきた産業の一つに半導体があります。当初、半導体の世界でも、CAD(Computer Aided Design)を使って回路を描画することが重要視されていました。CADを使わなければ半導体回路が作れないので当たり前のことです。しかしながら、一回の試作に時間やコストがかかるため、早期のうちにコンピュータを駆使したシミュレーションによる設計支援ツールであるCAE(Computer Aided Engineering)が普及し始めました。現在では、EDA(Electronic Design Automation)という名称で、コンピュータを利用した設計支援システム(CADやCAE等)の総称として幅広く認知されています。

半導体の世界では、プロセスシミュレーション、デバイスシミュレーション、回路シミュレーション、論理シミュレーション、システムシミュレーション等、様々なシミュレーションが使われています。設計だけではなく、評価、解析、検証など、あらゆるフェーズで有効活用されています。回路シミュレーションで使われるシミュレータは、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)と呼ばれ、多くのEDAベンダーが取り扱っています。半導体回路設計者のほとんどがSPICEを使って回路設計、シミュレーションしている状況です。

SPICE系シミュレータを使って半導体回路のシミュレーションを行う際には、PDK(Process Design Kit)というものが必須になります。PDKは、半導体ファウンドリーが提供する基本的設計情報の一つであり、この中にはSPICEモデルが含まれます。現在においては、通常PDKに含まれるSPICEモデルを使わずに、半導体回路の設計をすることはありえません。半導体の設計環境でSPICEモデルが必須であるこの状況は、今後、ボードやモジュールの設計環境にも同じように必然性をもって波及していくに違いありません。これは、エレクトロニクスの世界における「歴史の必然」だと考えられます。いずれ、ボードやモジュールの設計で当たり前のように、SPICEモデルが使われるようになる時代が到来することは自明の理と言えるでしょう。

次回は、ボードの回路設計で多く活用されているSPICEシミュレータの特長や使われ方、最近の動向や活用メリットなどを解説いたします。